幕間(2) 県立虎ノ門高校ミステリー研究会・超完全版2008-02-11 Mon 12:51
ここは、県立虎ノ門高校『ミステリー研究会』の部室。そこには顧問で普段は国語教師の氷室竜と、部長の湯沢香織と副部長の古城竜也の三人がいた。 「で、古城君はどうしたいんだ!ここを辞めて、野球部に行くのか?」 今まさに顧問の氷室が、副部長の古城にそう詰問していた。 すると、古城は。 「俺だって、甲子園に行きたいんだよ!」 それを聞いた部長の湯沢は、古城にそっと近付き、その頬を思い切り引っぱたき、古城にこう言い放った。 「甲子園、甲子園ってそんなに甲子園が大事なの?もう、あんたなんか知らない!そんなに行きたけりゃ甲子園でも何でも行けばいいのよ!」 古城はこの予期せぬ出来事に一瞬唖然として、黙って湯沢を見つめていたが、やがて・・・。 「何だよ、いてーな。香織、お前に一体俺の何が分かるというんだ!ああ、辞めてやるさ!こんな廃部同然のクラブなんざな!今に見てろよ!俺は絶対この夏には一回りも二回りもでかい男になって、甲子園のマウンドに立ってやるからな。覚えてろよ!」 そう捨て台詞を残して、古城は部室から逃げるように出て行った。 まさか、この古城の言葉が数ヶ月後には現実のものとなるなど、氷室と湯沢は勿論のこと、一体誰が予測し得ただろうか? そんなことを現時点では勿論知る由もない湯沢は、立ち去る古城の後ろ姿を見て、まるで負け犬に吐くかのような言葉を叫んだ。 「ばっかみたい!」 と。 それに同調 するかのように氷室もやれやれといった表情を浮かべて、ほとほと呆れ返ったと言うような言葉を湯沢に返した。 「まあ、ほっとけ」 と。 そして、その場を締めるように氷室が続けてこう言った。 「それより、来年度の部員集めについてなんだがね。実は先生にも何人か当てがあってね。湯沢もあんな野球馬鹿はほっといてさ。そっちの極めて現実的で切実な話をしようじゃないか」 氷室のその提案に湯沢はすぐさま頭を切り替え、是非もなく頷く。 「そうですね―」 |
幕間(1) 県立虎ノ門高等学校・超完全版2008-02-11 Mon 02:18
私立龍宮学園高等学校の隣に、その高校はあった。毎年、東大進学者を50名以上輩出する県下でもトップクラスの県立進学校。今年創立80周年を迎える伝統校でもあり、野球部は春夏の甲子園出場回数通算30回という常連。その名も、『県立虎ノ門高等学校』。
そんな虎ノ門高校の理事長の名は、三沢明。何を隠そう県立虎ノ門高校の隣にある龍宮学園高校副校長の三沢忠志の実兄である。兄は県下の進学校の理事長、弟は経営難が続く私立高校の副校長。このあまりの格差にしばしば二人は格好の比較対称にされていた。 その二人が今、県立虎ノ門高校の理事長室で、校長教頭を従え、何やら密談を交わしていた。理事長室に置かれているソファーの中心に陣取っているのが、虎ノ門高校理事長の三沢明。禿頭に眼鏡をかけた初老の人物。その正面に座るのが、その弟で龍宮学園副校長の三沢忠志。白髪に眼鏡をかけており、髪があるなし以外はさすがに兄弟だけあってよく似ている。 年も明が59、忠志が57と2つ違いであり、同年代だ。 そして、理事長の右隣には、虎ノ門高校校長の篠宮虎明。勘のいい読者ならお気付きかとは思うが、なんと龍宮学園校長、篠宮辰義の実弟である。 さらに理事長の左隣には、教頭の唐沢友視。こちらは龍宮学園教頭、唐沢瑞城の従兄である。 この三沢、篠宮、唐沢の親戚関係こそ、この二つの学校を対立させているすべての発端。 と、そこでようやく弟の忠志が、理事長で兄の明に話を切り出した。 「兄さん、龍宮学園を虎ノ門高校が、ここ二年の内に吸収するっていう話なんだけど」 気弱な弟が、何事にも気が大きく寛大な兄におずおずと話し掛ける。 すると、その話を聞いた兄は突然大声で笑い出し、気弱な男にこう話を切り出した。 「吸収?人聞きが悪いことを言うな、忠志。言葉選びには気を付けたまえ。吸収ではなく、経営統合だ。所謂企業合併。まあ、君達にとってみれば、M&A。謂わば企業買収ならぬ学校買収と受け取られてもけして可笑しくはないがね。しかし、忠志。よく考えても見たまえ。これは、君達にとってもけして悪い話ではないはずだ。なにしろ、君達の学校が抱える負債を我々が一手に引き受けようというのだからな。聞けば君達の学校は、来年度の予算もままならないという話らしいが、そこのところはどうなんだね?」 |
|
| HOME |
|


